亀爺のおたすけ雑談集



I「老人社会だ」の巻

風邪を引いてしもうて、かかりつけの内科へ行ったんじゃ。

すると、その昔、美人で評判じゃったおばあさんが嫁に(といってももうおばあさんじゃが)手を引かれて来ていたんじゃ。

「どうかしましたか?」

「あ〜あ。こんにちわ」

ペコリと頭を下げてくれた。嫁が言うには、
「おばあちゃんが、頭が痛いと言うから病院へ来たら、今度は頭と違う腰が痛いと言うんですよ。今、頭と腰に良く効く点滴をしていただきました」と。

耳の遠くなったおばあさんにも聞こえるように大きな声で笑いながら言った。
おばあさんはもう87歳で少し呆けがきているんじゃと。息子は定年退職で、孫たちは遠くで暮している。今では老人だけの家庭になって、老人が老人のお世話をしているんじゃと。

「お世話は大変ですね。ご苦労様です」

「みんなは、おばあちゃんに施設に入ってもらったらと、言いますが、私がお世話できるあいだはと頑張ってるんです‥‥」

親子だから当たり前とはいえ、介護は大変なことじゃ。

右を見ても左を見ても、老人が目をひく。わしもお爺になってしもうた。まず、家族の中でのたすけあいから『世界たすけ』が始まるんじゃな。

「子ども嘆くな来た道じゃ、年寄り笑うな行く道じゃ」と言うじゃろう。子どもや老人を笑っちゃいかんのじゃ。

「おじいちゃん、注射ですよ」 看護師さんが呼びにきた。
あっ、わしは注射が大嫌いじゃった。あうう‥‥。

「誰かわしをたすけてくれ―」とほほ。