亀爺のおたすけ雑談集



A「いんねんに負けたらあかん」の巻   その2

あれから半月たったある日の夕刻、彼女から電話があったんじゃよ。
「今、東北道を走っている。これから天理へ行きます」と…。

聞けば運転免許を取って日も浅い。東北道も首都高速、東名高速も自分では運転したことがないとのこと。もう出発してしまった。あれれ…。

事故を起こさず無事におぢばについてくれよ。心配で心配でたまらない。ハンドルを持つ手にさぞや力が入っていることだろう。

お願いづとめをして神様にお護りいただくしかない。
「なむ天理王命 なむ天理王命…」                 

午後11時、車に荷物をいっぱい積み込んで無事おぢばに到着してくれた。

決死のドライブは「修養科」へ入学するためのおぢばがえりだった。

思い切ったことをする気の強い性格が却っていいのかも知れないが、これではわしのか弱い心臓が持たないわ。

「まだまだやり直しができる。神様は必ずたすけて下さる。いんねんに負けたらあかん。いんねんに負けたらあかんぞー」電話で叫ぶ、わしの言葉を信じて信仰を求めてついて来てくれた。

現在、Sさんは離婚も成立し、母と一緒に暮らす事を希望した長女と次女との新生活を始めたんじゃ。

後日、「あの時、電話をかけてくれていなかったら、きっと死んでいました」
Sさんは屈託のない笑顔で語ってくれた。きれいな白い歯が眩しく印象的じゃった。
母娘で幸せを掴んでもらいたいと願っているんじゃよ。

うふふ、預かっていた睡眠薬と精神安定剤を捨てた事を彼女はまだ知らない…。