亀爺のおたすけ雑談集 



B「くも膜下出血」の巻

「母が、くも膜下出血で手術中です。神様に祈ってください」
と、夜遅くの電話じゃった。

2年前に修養科を修了した娘からじゃ。突然電話してきてはわしを驚かせる。
今回もそうじゃった。以前から母親は呼吸器が悪く酸素ボンベが離せず入退院の繰り返しじゃった。

「一週間が山だそうです」

「なぜ、もっと早く言ってこないのじゃ」

「たすけて、たすけてください。お願いします」

「お前たち母子は、顔を合わせりゃ喧嘩をしているのお。お前は母親が嫌いじゃなかったのか?」

「母が元気になるまで、休戦です。とにかく、たすけてください。ねえ先生」

「この親不孝者。お前には口喧しい母親じゃが、いつも心配しとるんじゃ。自分勝手な事ばかりしおって」

「これからは母に心配かけないようにしますからたすけてください」

「心配をかけないのは当たり前じゃ。お前ももう40歳じゃろて。これからは親を喜ばせる生き方をすることじゃ。わかったな」

「きっと、喜ばせる生き方をしますからたすけてください」

翌日、病院へ駆けつけた。
母親が「先生、まだ生きてましたよ」と、無邪気に笑って迎えてくれたてのお。
夫と子供には十分に苦労させられた老婆じゃたから。
「娘がのぉ、母をたすけてくれと泣いて電話してきたぞ」

「‥‥‥」

三週間後、電話が鳴った。

「母が退院しました。」

と、娘の明るい弾んだ声じゃった。

「ところで、約束は覚えているな」

「えっ、どんな約束しましたっけ?」

「うむ‥‥‥?!」